7/18、音楽と思想のbar CoolFool様のステージ
芽部様presents「MUSIC NEEDS YOU, POETRY LOVES YOU」にて朗読した詩を載せています。
アシエの感想付
   酸性雨


 また会おう、酸性の雨
 胡粉のように白い渇きに
 外界を隔てる遺伝子を任せた身のひとつひとつ
 大地に住まう友のひとつひとつ
 麻色の巻貝が天の日を見て
 浴びて
 言ったように
 山のように
 晴れやかなる雪に溺れるおまえは
 いつか我らの友となる

 おまえはそこで
 月ほどもある振り子の
 静かな伝熱に足をつけて
 振り子の外波は
 またひとつ充足を生むのだから
 撒かれる在りように目を凝らすか
 六つ足を踏み出すか
 写し出される姿の良し悪しをすべて投げ入れ
 任せるとよい
 多くの糧が白い波の奥にあるアユタヤに消えていった
 その叡智でもって今日の美貌は眩く
 収まるべき器のないほどにあり余っている
 それをすべての器に足りさしめよ
 いつか夢に見た緑を
 優しげな麦星をその胸に吸い込み
 その最小の粒とともに噛み締めたように
 日と日の間を飛び
 だから酸性の雨よ
 おまえのその質は獅子であり水鏡である

 その事実を知る我々は
 おまえを旅へと送り出す
 その昔、おまえの目に降り注いだ眩しさを払い
 耳を塞ぎ
 赤ん坊が身の上に塗る渇きを
 もっとよく見分けられるように

 自動記述詩22  2022/01/31〜2022/02/01

5月のシュルレアリスム展に向けて書いていた自動記述集より。
自動記述は自身の力量では出せない驚きが出る、それも“多く”出るのが悔しくもあり、また楽しくもある。
それでも人の特色が出るのが面白くもあり…


   血潮

 私が今までに飲み込んだすべてが
 血潮であったように
 あの真空の塵も
 すべて血潮に包まれている

 私が河を流している
 すべての星を
 血潮の海で浸している
 雨は私の血潮である
 鋼の太陽よりもたらされる 鉄の雨である
 名もなき星にも私は降り注ぐ
 そうして私は 水源であるおまえの事実を
 世に注ぐことになる

 私は巡らない
 湧き水は無尽蔵に出で
 河は海へと還らない
 おまえは死なない
 おまえの生命は
 死を孕んでなど
 いないから

 そうだ この街に降る雨は
 おまえの黒い瞳を核として
 その意味だけを おまえの意味だけを
 満たそうと決めた
 無限の血潮なのだ


   沈黙

 石畳の側溝に流れる
 無尽蔵の血
 に歯車を浸すため
 街へと繰り出した

 夜の太陽は鋼球の鈍く灼け放つように
 静寂に伝熱を乗せる
 その歌をピンに記し
 スプリングを巻く優しい手を
 もらい受けるために赴く

 街肌がケースの象嵌となり
 まだ見ぬ被造物を祝い彩る
 その帰路に

 櫛歯を焼き入れる炉は静かに
 私が抱いたことのあるすべての幻想を焼いている
 隣で眠る兄弟に
 差し出す
 沈黙を作るために

上の2編の詩は自動記述ではない、自分の詩を模索しながら書いたもの。
が、作っているうちにその情景が濃い時間の流れとして脳裏に思い浮かばれたので、
途中から短編小説くらいの長さと書き方の作品に仕上げたい思いが強くなっていった。
そのため、私はこれらを短編の原型であり、ぶつ切りにされたプロットのようなものだと思っている。詩の完成品としては拙いからである。
ただ絵本の挿絵や、映画における映画音楽が形になった状態であるため、今後、完成品を作り上げていきたい。


  身支度

 18時 薄暗い家路を歩けば
 山から雨雲の匂いを纏った風が吹き付け
 川は雷雲の音を立てる
 恵みがやってくる
 朝にしとどに濡れた
 泣きそうな風は涯てまで
 匂いは郷愁の脚本のために
 集められ
 だが雨は雨で
 雨は雨であるというどうしようもない強さだけで
 幾多の我々に打ち付いてきた
 それだけを
 その前触れを身に染み込ませてきた土を
 心に連れ帰り
 私は少しばかり俯き
 演出家に
 今日の仕事は終わりだと伝え
 周囲の全ての明りを落とさせ
 義眼を外し
 鼓膜を忘れ
 想起の内に
 仮面の形をした蓋を開けにいく



「血潮」、「沈黙」とはまた違う面を出した自身の詩。
言葉に乗せることと言葉を選出することに頭を使いすぎている気がする。
ガチガチに固まってしまってはいけないのである。
そのためにシュルレアリスムに触れたのではなかったか?

続けていればきっと、もっと掴めるものがある。
自分の言葉を自分のものにしていく作業を、これからも続けていきたい。
2022.7.20 Acier